私と一緒にBFDを始め、同じタイミングでPIA-Ausbildungを始めたお母さん、Aさん。
職場で会うと、いつも元気いっぱい。「バーン!」と登場しては、世間話をしてハハハハと笑って去っていく肝っ玉母ちゃんだ。
私はVollzeitだったので昨年卒業したけれど、彼女はTeilzeitだったため4年かかり、今年がついに最終年。卒業の年になる。
来月に卒業試験を控え、彼女はかなりそわそわしている様子だ。
「ねぇカピバラ!もう緊張してるんだけど!いよいよあと1か月だよ!!」
「模擬試験の問題、全部コピーした?悪いことは言わない、日頃から問題文と例文はちゃんと読み込んでおいたほうがいいよ。大丈夫、大丈夫。Aさんならできるって。」
そんな感じのやり取りを毎回している。
私が知っている情報はすべて伝えた。先日は卒論や卒業試験のオリエンテーション的なこともしてあげたし、模擬試験の問題もすべて渡した。
何でもどんどん質問してきて、私のアドバイスや当時やったアクティビティをそのまま実践してくれるCさんみたいなタイプの面倒を見るのは、正直あまり得意じゃなかった。
でもAさんとは何年も前から同じ道を歩いてきたし、彼女のことを尊敬しているので、私にできることは全力でサポートしたいと思っている。
Aさんは難民として家族と一緒にドイツに来たとき、すでに50歳を超えていたと思う。かなり過酷な道のりだったようだ。
小学生の子どもが2人いるのでTeilzeitを選択したけど、本当に正解だったとよく言っていた。
母国では学校の先生をしていたそうなので教育学の知識はある。ただ、ドイツ語がとにかく難しく、語学の壁のせいで筆記試験の点数はなかなか伸びない。でも実習先での試験(Praxisbesuch)では本領を発揮して、いつも素晴らしい評価を受けていた。
保育士は現場の仕事だ。理論をきちんと理解して筆記試験で高得点を取れたらもちろん理想だけど、やっぱり本命は実地。子どもたちとどれだけうまく関われるかが一番大切。
正直、「筆記試験で4を取ったけどクソくらえ!私はそんなの気にしないよ!」というAさんのスタンスは悪くない。それくらい堂々としているくらいが丁度いいのだ。
それに実習先試験で1や2の成績を取っている彼女が、トータルで不合格になるとは思えないのだ。
そして今年から、卒業試験の筆記試験の際に辞書を使えるよう、学校側が配慮してくれることになったらしい。昨年、私たちの時に学校も学んだようだ。
(実際は学校が準備してくれるかと思いきや、自分で用意することになった。こんな仰々しい国家試験に、自分のすでに書き込みをした辞書を持ち込むことが奇妙に感じたのをよく覚えている。)
このAusbildungに取り組む外国人が、今までどれだけ少なかったのか。そんなことを物語っている。
目の前にある大きな山は、実際よりも大きく見えたりする。
でも、自分が立っている場所は、意外とそんなに高さの変わらないところだったりする。
そして、その山をどうにか乗り越えたあとは、「この山を乗り越えたんだ」という自信につながる。
彼女の山の向こうの景色がいいものであることを願う。
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