「ここに居る子たちはね、様々な理由で学童から追いやられた形になっちゃった子たちなの。でも、みんな本当はとってもいい子なんだよ。どこにどんな助けが必要なのか、私たちがちゃんと見てあげて、正しく暖かく見守ってあげれば、こうやってみんな幸せになれるんだよ。」
と言ったのは、治癒教育学童の担当教諭。彼女はソーシャルワーカーだ。
宿題に全然集中できない子、暴力的な子、鬱っぽい子、集団生活が苦手な子‥
そこは、そんな子どもたちを最大10人集めた、小さなグループ。
治癒教育学童(Heilpädagogische Horte)というのは、何も治療や特別なことをするわけではない。通常の学童と同じ12時から17時まで、同じ校舎の中で過ごす。
違うのは、ただ小さなグループで、教諭とより近く、より強い繋がりをもち、安心できる空間で面倒を見てもらえるということだ。あとは、子どもそれぞれの問題を解決するべく、両親やその他スペシャリストと一緒に協力していく。
子どもたちは普通に各自のクラスで午前中の授業を終え、ランドセルを持って治癒教育学童の教室にやってくる。「やっほー♪」
そこには毎日同じ2人の教諭がいて、毎日同じスケジュールで過ごす。
「元気?今日の学校はどうだった?」と先生が自分たちのことを気にかけてくれる。規模の小さいグループで、一人ひとりに十分目が行き渡る。より身近で面倒を見てもらい、毎日同じスケジュールで過ごすことが子供たちの精神の安定に何より大切らしい。
というのもドイツでは皆、体調がすぐれないとすぐに休む。うちみたいな大所帯だと、全員揃うと言うのは本当に稀で、いつも誰かが休んでいる。平気で1週間いなかったりするけど、それは実は教育者として良い手本ではない。先生は子どもの傍にいつもいることがとても大事なのだ。
子どもたちにとって先生は精神安定剤のようなもの。その先生がしょっちゅう休んだり、代理の先生が来たり‥となると、子どもたちは落ち着かなくなる。なので、治癒教育学童の教諭は体調管理も他の人より気を付けていると聞いた。プロフェッショナルだなぁ。
子どもたちは、1から4年生のミックス。
通常の学童にいて何か問題があり、担当教諭が「この子は小さいグループで過ごす方がいい」と判断した場合、治癒教育学童に”応募”する。
応募するというのは、入りたい子が全員入れるわけではないからだ。定員10人の家族のようなグループに雰囲気の合う子だけが迎え入れられる。
私は子どもたちをほぼ皆知っているのだけど、中には「この子かなり暴力的だったよな~」とか「この子ここにいたんだ?!(別に目立った問題はないと思ったけど‥)」という意外な顔も見た。
その暴力的だった子A君は一昨年、クラスや学童の先生の誰一人にも心を許さず、本当に手に負えない、大変な子だった。その子の笑顔を私は見たことがあまりなかった。
ただ今はどうだろう。治癒教育学童に移って2年弱、現在はあの頃の面影など全く感じさせないほど、笑顔で自発的で、とても幸せそうだ。私はもちろん同僚に聞いた。どうやってあの子をこんな風に?
そして彼女はその子どもの問題を説明して、冒頭の言葉を言った。
治癒教育学童では、通常の学童よりも大分子どもの親と密にコミュニケーションを取り、親との信頼関係も深めていく。今までネガティブなことしか言われることがなかった親が、治療教育学童では、ポジティブなこともたくさん言ってもらえるようになる。それはもちろん親にとっても嬉しいことだ。
通常の学童では、グループが大きいし両親とのコミュニケーションはそんなに取らない。よほどのことがあれば話し合いの場を設けたりするけど、幼稚園や保育園のようにお迎えの際に保育士と親が今日はどうだった?とかそういった話しをする機会はほぼない。子どもたちの多くは一人で家に帰るし‥。
治癒教育学童はいったいどんなものかと思っていたが、実際見学させてもらうと、みんな本当に楽しそうで、笑顔のあふれる素敵なグループだった。
フライブルクの他のいくつかの小学校にもあるみたい。ドイツは本当に教育に関しては先進国だなと思った。
#ドイツ #小学生 #学童保育 #HPF #AHDH #教育 #ソーシャルワーカー
コメント