はじめに:ドイツの保育士資格、2つのルート
ドイツで保育士になるには「Ausbildung(職業訓練)」を受ける必要がありますが、実は2つの種類があるのをご存知ですか?
- Schulische Ausbildung(学校型)
- PIA-Ausbildung(実践統合型)
どちらを選ぶかで、学び方・働き方・収入・時間の使い方が大きく変わります!
比較早見表:PIA vs. 学校型
PIA-Ausbildungの特徴とメリット・デメリット
特徴
- 3年間、学校と実習を並行
- 実習先で働いた時間も学びとしてカウントされる
- 給料が支払われる(=職員の一員として扱われる)
- PIAでは、3年間を通して基本的に同じ実習先(Kitaなど)で勤務する
- そのため、現場の人間関係・子どもたちとの関係を深く築ける
- 実習先でそのまま就職につながることも多い
メリット
- 実践力がつく
- 給料があるので生活が安定
- 現場での経験が多いため卒業後スムーズに就職できる
- 環境に慣れるまでの負担が少ない
- 長期的な視点で子どもと関わる経験が積める
- 同じ実習先で評価を受けるので、信頼関係がキャリアにつながりやすい
デメリット(一般的な)
- フルタイム並のスケジュールで時間の余裕が少ない
- 学業と仕事の両立が大変(特に語学がまだ不安な人にはきつめ)
- 学校の長期休暇(イースター・夏休み・クリスマスなど)も、実習先では通常通り出勤扱い
- ※学校型の場合はこの期間はまるまる休みになるため、自由時間の差が大きい
- つまり、“学生のスケジュール感”ではなく、“社会人の働き方”にかなり近い
デメリット(実習先の固定性)
- 3年間同じ実習先で学ぶことは安定していて安心感がある一方、
「施設が合わない」「人間関係がきつい」と感じた場合に変更が難しい - 途中での変更は、原則学校と実習先、両方の合意が必要
- 実習先によっては、支援やフィードバックの質にも差があるため、ミスマッチが続くと精神的にしんどい
- 他の分野を経験するのは、Fremdpraktikumという15日間×2回の課外実習だけなので、他を知るチャンスが少ない
学校型Ausbildungの特徴とメリット・デメリット
特徴
- 最初の3年間は基本的に学校中心だけど、実習も段階的に組み込まれている
- 私の出身校では、
→ 1年目は週2日実習、
→ 2・3年目は週1日実習
という形で、現場経験も少しずつ積んでいける - 4年目に1年間の<<Anerkennungsjahr(認定実習)>>を経て資格取得
- 実習先は毎年変更する必要あり
- 例:
1年目 → U3(0〜3歳の乳児グループ)
2年目 → Ü3(3〜6歳の幼稚園)
3年目 → Ü6(学童保育/Hortなど) - ※例外的に、学校や実習先の許可があれば同じ施設に2年連続で留まれる場合もある
- これはさまざまな年齢層の発達段階を理解するための配慮
メリット
- 座学にたっぷりと時間を取れるので、複雑で幅広い教育学をしっかりと学べる。
- 座学だけな訳ではなく、少しずつ実習を経験できる
- さまざまな年齢層1年ずつ関わることで、それぞれの分野でそこそこちゃんとした現場経験が得られる(自分に合った年齢層や施設スタイルを見極めるチャンスがある)
- 学んだ理論を実際の現場で試すチャンスがある
デメリット
- 実習はあくまで「お試し」的な位置づけなので、責任のある業務や本格的な実践力はPIAよりは少なめ
- 実習時間が短いため、「もっと現場に出たい」と感じる人には物足りないかも
PIAは学校休暇中も実習先で働くのが原則なので、「たくさん休める」と思っていた人にはギャップを感じることがあります。ただし、有給休暇(年間20〜30日)はあり、実習先が閉まっている夏やクリスマスにまとめて取ることは可能。ただし、生活は基本フルタイム勤務に近いため、自己管理が重要です。一方、学校型は年間3か月ほどの長期休暇があり、自由時間に余裕があります。
学校型の4年目「Anerkennungsjahr」とは?
- Ausbildungの最終年度(4年目)は、Anerkennungsjahr(認定実習)という
フルタイムの現場実習が1年間行われる - この1年をクリアして初めて、正式に保育士(staatlich anerkannte Erzieher:in)として認定される
柔軟性のある制度
- 半年ごとに実習先を変更可能! → たとえば、前半は幼稚園(Ü3)、後半は学童(Ü6)など
- 外国での実習もOK! → 海外のドイツ語圏(スイス・オーストリアなど)や一部国際園でも可能
- この柔軟さは、自分の適性を見極めたり、広い視野を持つのに大きなチャンス
メリット
- 実習先の選択肢が豊富なので、幅広い現場経験ができる
- 「いろいろな年齢層を見て、自分の“得意”を探したい人」に向いている
- 「将来海外でも働きたい」と考えている人にも◎
PIAと学校型:収入の安定感の違い
*BAföGの審査基準は、滞在歴や働いた年数などです。
【PIA vs 学校型】あなたに合ってるのはどっち?
PIA-Ausbildungが合ってるのはこんな人!
- 毎月安定した収入(給料)が必要
- 実習先での人間関係をじっくり築きたい
- 家庭がある/子育て中などで生活との両立を重視したい
- 実践的に学ぶのが好き、座学より現場派
- 早めに現場で働いて経験を積みたい&キャリアにつなげたい
ワンポイント:
- 「給料をもらいながら勉強できる」のは最大の魅力
- でも実習先が合わない場合の変更が難しいので注意!
学校型が合ってるのはこんな人!
- 勉強メインでじっくり理論を学びたい
- 年齢別(U3, Ü3, Ü6)など幅広く経験したい
- 外国でAnerkennungsjahrをしてみたい
- BAföGの申請が通るなら収入面もある程度OK
- 将来は大学進学(Fachhochschule)も考えている
ワンポイント:
- 実習先を毎年変えるのは「大変そう」に聞こえるけど、自分の適性をじっくりと知るチャンス!
- BAföG支給が不安定なこともあるので、生活設計にはちょっと計画性が必要かも
最後にちょっとアドバイス
PIAも学校型も、「正解」は一つじゃない!
学校型もPIAも、それぞれにメリットとデメリットがあります。
大切なのは、自分に合ったものを選ぶこと。
- あなたの今の生活状況
- 性格
- 学び方のスタイル
- 将来の夢
「どっちが正解」ではなく、「どっちが自分に合ってるか」です。
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