ドイツで保育士として働いていて、今でも不思議に思うことがある。
それは「子どもを守る」という保育士にとって最重要とも言える義務――Kindeswohlgefährdung(子どもの福祉の危機)への対応についてだ。
現場に出てみると、このテーマは驚くほど日常にある。子どもが小さな声で「ママに叩かれる」と打ち明けてくることもあるし、子どもとの会話の中から「?」と思うようなことがあり、最終的に該当するようなケースもある。
そんな子どもの発言を、保育士は聞き流すことはできない。必ず行動しなければならない。知らないふりや見逃しは許されず、その判断は子どもの人生に直結する。
そんなプレッシャーは常に背中にのしかかっている。
不思議なのは、このテーマをAusbildung(養成課程)の中でしっかり学んだ記憶がほとんどないことだ。
それに私はBFDとPIA-Azubiとして合わせて四年半も現場で働いた経験があるのに、一度もこういったことを耳にしたこともなかった。
友人に確認したところ、「うっすらとやった」らしいが、「うっすら」でいいレベルのテーマではない。
学校型AusbildungをしているD君に聞くと「授業でかなりやった」と言い、大量のプリントを送ってきてくれた。同じ資格を目指すのに、自分のコースではほとんど触れられなかったのに、別のコースではしっかり体系的に学んでいた。この落差には正直驚いた。
実際の現場ではどう対応するか。
子どもが「叩かれる」などの言葉を口にしたとき、まず必要なのはしっかりと聞くこと。
実習生であれば自分が直接動くのではなく、すぐに主力の教諭に伝える。それが基本である。
その後はその主力教諭が責任をもって対応にあたり、状況を記録し、チームや園長と共有し、IeF ( Insoweit erfahrene Fachkraft ) という子どもの福祉の危機専門スタッフに連絡を取り、指示を仰ぐ。必要があれば、Jugendamt(青少年局)に相談する。
守秘義務よりも優先されるのは子どもの安全である。
Ausbildungの授業では薄くしか触れられなかったテーマが、現場に出てみるとほぼ毎月のように起こる。これは保育士という仕事の「見えない核心部分」だと感じる。
正直、もっと養成課程で強調されるべき内容だと思うし、現場に出てから学ぶにはあまりに重すぎるテーマでもある。
さらに付け加えると、施設によって「コンセプト」の内容や取り決めが異なる。どこまでを誰が対応するか、どういう順序で進めるかは園ごとに細かい違いがあるのだ。そのため、いざというときに慌てふためかないよう、あらかじめ勤務先のコンセプトに目を通しておくことを強くおすすめしたい。
子どもの小さなSOSをどう受け止めるか。保育士の責任は想像以上に大きい。これは仕事という枠を超えた、人としての姿勢を常に試されているような感覚でもある。



コメント