以前、職場のFortbildungで「LGBTQIA*とそれを理由にドイツに難民として移住した人々について」学ぶ機会があった。フライブルクのローザ・ヒルフェが主催するワークショップだ。
今回はそのワークショップでどんなことを学んだか、自分の中の気づきなどについて書きたい。
十人十色とはよく言ったもので、十人いれば皆それぞれ違った色(外見・性格・趣向・能力等)を持っているーという意味だ。
それは性的趣向にももちろん当てはまることだと個人的には思うのだが、世間は性別を男性と女性の2つに分けたがる。世の中には、それ以外の人が大勢いるにも関わらず、その人々は差別に苦しんでいる。
例えばの話だが、トランスジェンダーの人たちがどれだけたくさんいるかというと、私がドイツで知り合ったその数。全体で出会ったうちの約4割を占めると思う。
私たちはどうやって、よりオープンで多様性が尊重される社会を築き上げることができるのか。
そして性的指向や性自認を理由に難民という選択肢で外国に避難することを余儀なくされた人々の状況、彼らは何を必要としているのか。
最後に、子どもたちにこのテーマをどうやって伝えるかについても触れた。
自分の代名詞(Pronomen)
まず私にとって新しかったのは、ローザ・ヒルフェの人々が最初の自己紹介の時に代名詞について必ず述べていたこと。代名詞というのは、自分が呼ばれるときの「彼」「彼女」のことだ。
代名詞(Pronomen)の意識がなぜ重要かというと、代名詞は個人のアイデンティティを尊重するための第一歩。
間違った代名詞を使われることは、トランスジェンダーの人々のアイデンティティの否定につながり、精神的な負担を強いることになる。
ドイツ語って、日本語に比べると言葉で男女の差を出したがる言語だよなと思う。
日本だったら相手を「ミュラーさん」と呼ぶが、ドイツでは「さん」といったユニバーサルで便利な言葉はなく、このミュラーさんが男なのか女なのかをハッキリとさせる以外方法がない。「Herr Müller / Frau Müller 」といったように。
日本語だと、そこにいない第三者について「ミュラーさんが…」とか「あの人が」などと呼べる。ドイツは「彼」「彼女」の2つしかない。先ほどと同様の問題だ。
ドイツ語では言葉の影響力が大きいが故に、ドイツでは特に「代名詞を聞くことが大切」という考え方が広まりつつある。
LGBTQIA*難民の現状
トランスジェンダーの人々は、一体どんな理由で母国を離れざるを得なかったのか?
それはほとんどの場合が、母国でトランスジェンダーが受け入れられないからである。
そんな人々がドイツ・フライブルクに来たら、ローザヒルフェはビザ取得のサポートやコミュニケーションの場としてコミュニティの提供をしている。
このビザ取得のプロセスの話を聞いて背筋がぞっとした。性自認が理由でドイツにやってきて、ビザを取得したい時は、公聴会のような知らない人の前で、自分がLGBTQIA*だということを証明しなければいけないのだ。なんという屈辱。トラウマになる人も多いと聞いたが、当然だと思う。
「それ以外その人がLGBTQIA*だと知る手段がない」と言うドイツはやはり本質的にはまだ遅れているようだ。トランスジェンダー先進国を見習い、どうにかしなければいけない。
我々保育士が、子どもたちにできること
子どもたちに多様性をどう伝えるか?
年齢に応じたアプローチ(小さい子には絵本、もう少し大きい子には話し合いやゲーム)。
「違いを知ることは、誰かを尊重することにつながる」と伝える大切さ。
そして先ほど言ったように、言葉の影響力が大きいドイツでは、私たち保育士はまず言葉遣いに慎重になるべきである。
例えば職業名。同じ職業でも、本人の性別で呼び方が変わる。例えば「Erzieher」だと保育士(男性)になるし「Erzieherin」だと保育士(女性)になる。
これは保育士のAusbildungでも習う(UVL: テーマ Gender)のだが、私たちは子どもたちに先入観を植え付けないように言葉遣いの面で努力すべきだと。
女性でもパイロットになれる、男性でもバレリーナになれる。今回の例で言うと、保育士の仕事はドイツで昔から女性が多い職業だった。そのため多くの人は総じて「Erzieherin=保育士(女性)」と呼ぶ。言葉が頭の中で、保育士=女性というイメージを植えてしまう。
だからこそ、私たちが子どもたちに多様性について伝える時、まず一番最初に言葉選びが大切なのだ。
その次に、多様性をテーマにしたプロジェクトなんかができれば、よりいいだろう。
ワークショップを通じて感じたこと
フライブルクにこうした団体がいて心強い。彼らはとてもウェルカムで優しかった。色んな事を、私の10倍考えている、そんな貫禄すらあった。知ろうとする人を拒まず、優しく受け入れてくれる。
「思ってるだけじゃ伝わらない」
小さなことでも、まずは自分の行動を変えようと思った私は、その日からレインボーを身に着けるようにしている。
それを通じて「私はあなたのことを尊重しているよ。」というメッセージを伝えられたらと思う。
参考サイト:https://ilga.org/
画像出典:https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=22432378&word=LGBT%E3%81%AE%E6%97%97%E3%82%92%E6%8E%B2%E3%81%92%E3%82%8B
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