【フライブルク】移民評議会の選挙に行ってきた話。

日記

今日は、ドイツ・フライブルク市における移民評議会(Migrant-innenbeirat)の選挙実地投票日だった。

実は、事前に選挙案内の手紙をもらっていたのだが、なんだかんだとオンライン投票の締切を逃してしまった。せっかくの機会だし、実地投票所へ足を運ぶことにした。

しかも投票所は、なんと私がAusbildungをした学校。1年前はこの場所で卒業試験の真っ最中だったなんて、まるで遠い昔のことのように思える。

 

この選挙に関わるようになったきっかけ

私が移民評議会の存在を意識し始めたのは、飲みの場で友人に「ビザの申請で散々な目にあった」と愚痴をこぼしたのがきっかけだった。

私は現在、ドイツ在住7年目。BFD(連邦奉仕活動)とAusbildungを経て、今は教育者として学童保育の現場で、休む暇もなく真面目に働いている。

それでも私はこの国で選挙権がない

真面目に学校へ通い、卒業し、社会に貢献しても、ビザ申請では不必要な書類の提出を何度も求められ、プライバシーも踏みにじられる経験をした。仕事ビザが下りるまで半年もかかった。

 

外国人であるという「見えない壁」

ドイツで外国人として生活するのは、正直なところ「骨が折れる」と感じることがある。差別や偏見は、時にとてもさりげなく、でも確実に存在している。

たとえば――

2人の子どもがギムナジウムに進学を希望し、成績も同じだとする。

1人はドイツ人、もう1人は外国人。

そうなると、ドイツ人の子どもが優先されて内定をもらうことがあるのだ。

これは単なる噂話ではなく、実際に起きていること

「ドイツ人じゃない」というだけで、知らないうちに誰かがそのチャンスを握りつぶしている

これは、目をそらしてはいけない現実だ。

だからこそ、「平等な教育機会」を目標に掲げて活動する人も多くいる。

 

それでも、あきらめない

最近のドイツ社会は右傾化が進み、外国人排除の意見も強くなっている。

そうした話をしていると、友人は本気で怒ってくれた。そしてその友人の知人が「現状を変えたい」と移民評議会への立候補を決意したと聞いた。

愚痴を言っているだけでは、何も変わらない。

動こうとしている人を支えることも、私にできる大切な一歩だと感じた。

 

 署名、そして選挙へ

3月末には立候補に必要な署名集めがあり、私も「友人の友人」のために署名をした。10人分の署名が集まれば立候補資格が認められる仕組みらしい。

彼は無事に認められ、今回の選挙に立候補した。

 

 

投票のしくみ

  • フライブルクの移民評議会の選挙では、16歳以上のすべての外国人籍の市民に投票権がある。
  • ドイツに帰化した人も、事前に申請すれば投票できる。
  • 投票はオンライン(4/28~5/23)と実地(5/25)の2種類。
  • オンライン投票は12言語に対応しており、日本語はないが英語も選べる。
  • 投票できる候補者数は最大19人。候補者は30~40人ほどいた。

 

多くの候補者が掲げていたスローガンは共通していた。

  • すべての人が参加できる社会をつくること
  • 差別や排除のない共生社会をめざすこと

現在、フライブルクでは外国人籍の住民率なんと31%

約38,000人のフライブルク市民が投票可能とされていて、これは過去最多とのことだ。

 

私には連邦議会などの一般的な選挙権はないけれど、私たちのような移民のために誰かが動こうとしていること、そしてそれを支えるという形でこの選挙に関われたことは、思った以上に大きな意味があった気がする。

 

もしこの記事を読んでくれている誰かが、ドイツで、フライブルクで、同じように「何かを変えたい」と思っているなら、ぜひこの移民評議会に注目してほしい。

 

ちなみに、移民評議会の基礎的なスローガン(理念)は以下のようにまとめられている。

  • 移民の多様な声を市民社会の中で代表すること
  • 多様性のある都市の重要性についての意識を高めること
  • 移民の持つ能力と、都市への貢献が政党に評価されること
  • 移民の積極的な社会的・政治的参加を可能にすること
  • 社会の結束を強め、特に人種差別をはじめとする偏見と闘うこと
  • 平等と公正を求めること
  • 移民コミュニティの力を高めること

どれも耳ざわりのいい理想論に聞こえるかもしれない。でも、実際にこうした理念が明文化され、活動の軸になっているという事実は、私のような立場の人間にとっては少なからず希望だと思う。

 

コメント