某月某日、うちのクラスの実習生(Azubi)であるG君の実習先訪問試験(Praxisbesuch)が行われ、私はその付き添いをすることになった。
試験と事前準備
試験内容はシンプルで、「円になって話す時間の進行を担当する」(Kreissituation leiten)というものだった。
ドイツの幼稚園や学童では、「朝の会」や「始まりの会」などを子どもたちと円になって座って行うことが多く、それは毎日のルーティンでもある。
今回はその進行役を務めることが試験内容だった。
時間は30〜40分間。その後15分の休憩を挟み、30分間の振り返り面談(Reflexionsgespräch)が行われる。
やはり Praxisbesuch は大きなイベントだ。私はサポートするつもりで、この1週間、彼の計画を子どもたちと一緒に試しながら慣れさせ、反応を確認し、不安要素を洗い出してG君に伝えた。
そして前日には子どもたちに「明日はG君の先生が見に来るから、ちゃんとG君の言うことを聞くんだよ!」と念を押しておいた。
当日は、試験の準備に集中できるよう、事前の指導員面談(Anleitergespräch)はなしに。
緊張の試験、スタート!
14時に子どもたちと円になって座ると、試験官の先生が到着し、すぐに試験はスタートした。
試験の流れ
- 出欠確認
- 気持ちを表現する円の時間(Gefühlskreis):動物をテーマに
- 聴覚を使った遊び
- 宿題の説明後、 子どもたちが各自席につく
- 宿題スタート
普段はおしゃべりばかりの子どもたちが、この日は驚くほど静か。まるで借りてきた猫状態だった。
私は心の中で「いいぞ、その調子!」と思いつつも、そのギャップに笑いそうになった。
試験のポイントになった出来事
気持ちを表現する時間(Gefühlskreis)で、1人の子どもがこう言った。
「僕、怒ってるんだ。みんな、なんでかわかる?」
話し方からして、「理由を聞いてほしい」という気持ちが伝わってくる。
G君が「どうして?」と尋ねると、
「うーん、やっぱり今は言いたくない。」
それを聞いたG君は、
「そうか。じゃあ、あとでそのことについて話そうね。」
と言って、その場を締めくくった。
すると、その子が宿題が終わった後、私のところに来て、
「カピバラ、僕がなんで怒ってたか教えてあげようか?」
と話しかけてきた。
その子にとって「怒っている」という気持ちは本物で、くすぶっていて、早く誰かに話したかったのである。
試験のポイントと振り返りの重要性
この場面は、実はとても大事なポイントだった。
しかし、G君は振り返り面談(Reflexionsgespräch)でこの出来事について触れなかった。
そこで、私のほうから話題に出した。
先生の話では、正しい対応として考えられるのは次の2つ。
- 子どもが「この先生は自分の気持ちの存在を理解してくれたな」と思う反応・対応をする。
- 「あとで話そうね」ではなく、「〇〇の後に話そうね」と、具体的なタイミングを伝える。
G君がその場で話し合いをせず、「あとで話そう」と言ったこと自体は、ここでは詳しい説明はしないが、色んな背景から「問題がない」ということになった。
ただし、試験の振り返りで自分からこの場面を挙げなかったことが減点につながった。
G君の対応が完璧でなかったとしても、それ自体は問題ではない。
大事なのは、「振り返り面談で自分からその場面を振り返ること」。
振り返りを深めることができれば、成長の機会になり、評価にもつながる。
普段から「計画 → 実行 → 振り返り」のサイクルを回すことが、気づきを増やす近道になる。
先生はG君の振り返りが少し浅いことも見抜いていて、こんなアドバイスをしていた。
「Praxisbesuchには、学校で学んでいるテーマをもっと組み込んでみるといいよ。そうすれば、自分の考えも整理できるし、振り返りでも自然に話題にしやすくなるから。」
まさにその通りだった。
実際、準備や振り返りの丁寧さは、試験本番の行動に現れるものだと改めて感じた。
試験結果とG君の様子
G君の成績は良かった。
試験自体の成績はとても良く、振り返り面談の部分は少し評価が落ちたが、それでも十分満足できる結果だった。
試験官の先生も理解のある人で、彼のフィードバックはとても納得できるもので、私は「いい先生だな」と思った。
G君は「大きな肩の荷が下りた」と言い、
試験が終わった後は校庭で子どもたちとひたすらサッカーをしていた。
1年前の自分と今の自分
自分自身、まだ1年前に Praxisbesuch を受けたばかりだったのに、今は実習生に同行する立場になっている。
もちろん私も緊張した。
Ausbildungを卒業した後も、毎日毎日新しいことが待っている。こうして日々いろんな経験をしながら、自分の幅を広げていくのだなと改めて感じた。
学びに終わりはない。
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