【ドイツで保育士】ドイツの保育士養成制度「PIA」とは? 〜実践と理論を同時に学ぶAusbildung〜

Ausbildung

ドイツで保育士(Erzieher/in)を目指す方法のひとつに、「PIA(Praxisintegrierte Ausbildung)」という制度があります。

これは実践と学校教育を同時に行う、実務重視のAusbildungです。

この記事では、PIAの仕組みや実習先の種類、給料や労働時間など、私自身の経験をもとにリアルな情報を紹介します。

 

Erzieher/in PIA-Ausbildungとは?

PIA(Praxisintegrierte Ausbildung)は、実践統合型と呼ばれる保育士養成の仕組みで、学校で理論を学びながら、同時に実習先で実務経験を積む形式のAusbildungです。

慢性的な保育士不足を早い形で補う為に、新しく作られました。

PIAと学校型の違い(ざっくり比較)

よく比較されるのが「学校型Ausbildung(Schulische Ausbildung)」ですが、実はどちらも学費は基本的にかかりません(※州立の学校の場合)。

ただし、大きな違いは「給料の有無」です。

特徴 PIA(実践統合型) 学校型(全日制)
学び方 学校+実習先を並行して通う 学校中心、実習は一定期間のみ
給料 あり(実習先に雇用される) 基本的になし(※)
学費 なし(州立の場合) なし(州立の場合)
経済支援 給料として毎月支給 BAföGや補助金の申請が必要

 

※ 学校型でも、家庭状況や年齢に応じてBAföG(奨学金)やその他の支援金を受け取ることは可能です。ただし、PIAのように働いた分として安定した給料がもらえる仕組みとは異なります。

学校型Ausbildungをしている子たちによると、奨学金の支払いが遅れることは頻繁にあり、数か月分をまとめて支払われることも珍しくないとか。

PIAでは、実習先=職場として雇用されているので、雇用契約のもと、働いた分の給料が毎月支払われます。

この「働き、安定した収入を得ながら学べる」という点が、PIAの一番の魅力です。

 

実習先の種類

PIAでは、実習先に週2日通い、実際に子どもたちと関わりながら経験を積みます。実習先は大きく以下の4種類に分けられます:

 

  • U3(0〜3歳):Kinderkrippeなど
  • Ü3(3〜6歳):KITAなど
  • Schulkind / Hort(6歳以上):学童保育やFreizeit施設など
  • Jugendarbeit / Jugendhilfe(青少年支援)

 

多くの人は希望する年齢層や、内定が出た施設を実習先にします。実際、U3・Ü3が圧倒的に多く、私のクラスでも私以外は全員U3・Ü3です。私のようにSchulkindやJugendarbeitを選ぶ人は少数派です。

そもそも、こういった施設の数が少ない上に、「Erzieher/inの資格で幼稚園以外でも働ける」ということがあまり知られていないのかもしれません。

 

実習先は3年間継続

基本的に、同じ実習先で3年間働き続けます。これは、子どもの成長を継続して見守ることや、信頼関係を築くためです。

もし職場環境や子どもの年齢層などが合わないと感じたら、実習先を変更することも可能です。ただし、新たに関係を築く必要があるため、できれば最初に決まった場所でやり通すのが理想です。

 

実習生の給料(例:バーデン=ヴュルテンベルク州)

実習先は私たちAzubi(Auszubildende)を特別な雇用形態で雇い、給料や社会保険料を支払ってくれます。

月給の目安(Brutto)

  • 1年目:1,140€
  • 2年目:1,202€
  • 3年目:1,303€

 

ここから健康保険・年金などが差し引かれ、手取り(Netto)は約150〜200€減になります。保険の等級や扶養状況によって変動します。

 

ボーナス(Urlaubsgeld・Weihnachtsgeld)

職場によって、11月にクリスマスボーナスとしてまとまったお金が支給されるところもあります。

実習生ももらえるかは、要確認です。

学校型Ausbildungの生徒はもちろんもらえません。

 

労働時間と休暇

PIA-フルタイムの場合

  • 1日8時間勤務(うち6.5時間は子どもと過ごし、1.5時間は会議や書類作業)
  • 通常は週2日勤務(学校が週3日)
  • 年に2回の「ブロック週」では、実習先に週5日勤務
  • 学校の休暇期間(イースター、夏休みなど)は、実習先で勤務
  • 有給休暇は年間約30日で、実習先が閉まる期間(夏休み・年末年始など)にまとめて取ることが一般的

 

実習先で行うこと

実習生は、担当グループの一員として子どもたちと関わり、日々経験を積んでいくほか、以下のような活動も行います:

 

  • 学校で学んだ内容のアウトプット
  • 実習評価(Praxisbesuch):年2回、先生が実習先に訪問して行う実技試験
  • 子どもに関する記録・ドキュメントの記入

 

Anleiter/in(指導担当者)の重要性

実習を通して大きなカギになるのが、実習先の指導担当者=Anleiter/inの存在です。

 

  • 気軽に質問できる環境か
  • 実習内容を計画的に進めてくれるか
  • 定期的に話し合いの場を持ってくれるか
  • Praxisbesuchのときにしっかりサポートしてくれるか

 

などがポイントになります。施設によっては人手不足で、Anleiter/inがほとんど時間を取れないというケースもあり、そういった環境だと実習がかなり大変になります。

 

まとめ

PIAは「働きながら学べる」実践的な保育士養成制度であり、収入面でも安心感のある選択肢です。

 

ただし、実習先やAnleiter/inのサポート体制によって、学びやすさに大きな差が出るのも事実。

内容も想像以上にハードで、学校の休暇中も実習先で勤務するため、実質的に“休みがない”日々になります。

 

それでも、4年かかるはずのAusbildungを3年で修了できること、毎月の安定した収入があることは、PIAならではの大きな魅力です。

 

これからPIAに挑戦したい方の背中を、ほんの少しでも押せたならうれしいです

 

 

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