SALAMプロジェクト──移民の子どもたちを支える学生たちの取り組み / ドイツの移民先進国度を垣間見る

ドイツの学童保育

 

SALAMプロジェクトとは

フライブルク大学とフライブルク教育専門学校(Pädagogische Hochschule, 通称PH)の学生が主催する支援プロジェクトである。対象となるのは、移民の子どもや家庭の事情で十分な支援を受けられない小学生。

学生一人と子ども一人がペアになり、11月から7月までの9か月間、週に2~3時間ほど自由時間を一緒に過ごす。お話をしたり、公園に行ったり、夏はプールに行ったり、クリスマスの時期は一緒にクッキーを焼いたり…

子どもがやりたいことをリクエストして、学生ができる範囲で応える。そんな感じが多いが、場合によっては勉強したりと、過ごし方はさまざまだ。

多くの場合は、平日の昼過ぎから夕方にかけての時間に学生が子どもを学童まで迎えに来て、そこから一緒に過ごし、家まで送っていく。

もちろん学生・親・担任の学童保育士は連絡を取り合いながら進めていく。

 

このプログラムの目的は大きく2つ。ひとつは、移民の子どもやその他教育に恵まれない子どもの支援。そしてもうひとつは、学生が学びを実践的に活かす機会を得ることにある。そして学生はこのプログラムを修了すると、いくらか点数を稼ぐことができる。

 

学生は、子どもの家族や学校と密に連絡を取り合い、場合によっては大学の講師が同行することもある。このプログラムは、教育大学、フライブルク大学、フライブルク市、および6つのフライブルク小学校の協力によって運営されている。

 

 

私とSALAMプロジェクト

私のクラスの2人の子どもがこのプロジェクトに参加しており、彼らにSALAMパートナーの学生がいることは以前から知っていた。というのも、子どもたちから「SALAMパートナーの学生が両親の代わりに迎えに来た」「一緒に遊びに行った」といった話をよく聞いていたからだ。

 

特に印象的だった出来事がある。ある外国から転校してきたばかりの子が、ドイツ語を学び始めた矢先にロックダウンとなり、学校が休校してしまったのだ。半年に及ぶロックダウンの間、私は彼女のドイツ語の進捗をとても心配していた。しかし、久しぶりに再会して驚いた。彼女のドイツ語は見違えるほど上達していたのだ。それもこれも、パートナーの学生が継続的にサポートしてくれたおかげだ。

このプロジェクトがうまく機能する理由のひとつに、学生たち自身のバックグラウンドが関係しているのかもしれない。移民経験のある学生や、両親のどちらかが外国人で二か国語以上を話せる学生が多いため、言語や文化の壁を越えやすいのだ。

 

 

理解が深まったきっかけ

今回、私がこのプロジェクトをより深く理解することになったのは、私のクラスの子ども2人のパートナーの学生から、学期末のお別れパーティへの代理出席を頼まれたからだ。

 

お別れパーティは、7月下旬、夏休み直前に小学校の体育館で開催された。学生と子どもたちが準備したクイズやゲームをペアで解き、最後には子どもが修了証とアイスを、学生が修了証と花を受け取った。とても素敵な修了式だった。

 

こうした取り組みを目の当たりにすると、ドイツが移民支援の先進国と言われる理由を実感する。そして、日本もこうして移民に協力的な国になればいいのにな…と考えずにはいられない。

 

 

日本の現状と願い

私が育った町にはブラジル人移民が多く住む地区があった。しかし、そこに多くの家族が暮らしていたにもかかわらず、近所の小学校にはブラジル人の子どもはひとりもいなかった。それどころか、「あの地区にはあまり行かない方がいい」とさえ言われていたのを覚えている。

彼らがどこで学び、どこで遊んでいたのか、生活の様子はまったく分からなかった。心理的にも完全にシャットアウトされた世界だったのだ。

移住を決めるのは親であり、子どもたちに選択肢はない。それでも、新しい国で彼らが温かく迎えられ、協力的な心と支援の仕組みを通じて成長できる社会であってほしい。外国で暮らす立場になった今、そう強く願う。

 

SALAMプロジェクトについて詳しく知りたい方はこちら:https://www.ph-freiburg.de/psychologie/salam.html

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