今週の実習日、職場の同僚がため息をつきながら言った。
「なんか今日、朝から色々あって、もう‥とにかく私の日じゃないんだよね。そういう時って、全然我慢ができないというか、すぐにイラっとしちゃうじゃん?今日うちのクラスの子どもがあっちでギャー、こっちでギャーってするたびに『コラー!』って叫びまくって、もう本当に疲れた。今日が早く終わってほしい‥。」
ドイツでは、あまりツイてない日を「今日は私の日じゃない」と表現する。
彼女は普段すごく落ち着いていて理性的なタイプなので、イライラして子どもに叫んでいる姿は想像できなかった。彼女にもそんな日があるのだなあと思ったと同時にある思いが頭の中をよぎり、私はこう返した。
「めっちゃわかるよ。ていうか子どもたちにも、私たち(教諭)が人間で、調子が悪い時もあることを理解してほしいし、そんな時は少し協力してほしいよね。」
「ほんとそれ!!うち(学童)の子どもたちはそれが出来る年齢だしね。」
学童での仕事って、子どもと遊んで宿題見るだけで簡単じゃん~と思われがち。だけどそんなことはないし、大勢の子ども相手の仕事は結構エネルギーがいる。
ちゃんとした教諭は、普段から心身ともに健康でいられるように気を付けているけど、それでも病気になってしまうことはある。そんな時は仕方なく仕事を休む。けど、精神的に落ちている日に仕事は休めない。
毎日じゃないから、たま~にあるそんな辛い日は、子どもたちにも理解して協力してほしいなぁと思うのだ。教諭と子どもの関係性は、人間同士のやりとり。私たちは聖人ではない。
私も実際どうしようもなくしんどい日は、子どもたちに正直に言うようにしている。
「今日は私、あまり調子が良くないんだ。みんなの助けが必要なの。私が何か言う時は1回で済むように、みんなにはしっかり耳を傾けてほしい。」とか。
そしたら子どもたちは結構「カピバラ大丈夫??いいよ、助けるよ!!」とか言って協力してくれたりする。(笑)もちろん全然忘れられてしまうこともあるけど。
そして今週実習先で、素敵だなと思った瞬間があった。
私の担当クラスの主力教諭であるNは、今戦争が勃発しそうなとある中東の国出身。
翌日に祖国に発つ予定だったのに、飛行機がキャンセルになってしまったらしい。
現状の不安から、調子が良くないのは一目瞭然だった。普段は太陽みたいに明るい人なのに、視線は下向きで、表情も曇っている。
原因が原因だけに、私はNにかけてあげる言葉がわからなかった。
Nは子どもたちに言った。
「今日は私、本当にダメで、君たちといちいちディスカッションする気力がない。だから、協力してほしい。」
子どもたちもその様子から何かがおかしいと分かったらしく、おとなしく宿題をやりはじめた。
宿題もひと段落して子どもたちが遊んでいい時間になった時に、一人の子どもが言った。
「N、あの曲なんて名前だっけ?~~~~♪ってやつ!」
それはヘレーネ・フィッシャーという歌手の歌で、ドイツの浜崎あゆみのような感じ。(笑)
その子どもがノリノリで歌っているのを見て、私とNは笑いが止まらなくなった。
携帯で音楽を流すと、子どもたちは踊りだした。
Nに再び笑顔が戻った瞬間だった。
あの時、多分子どもたちはどこかでNを元気づけたいと思っていたのだと思う。
こういう人間味のある関係性を子どもたちと築くことが出来るのがNで、私の手本。
愛情もエネルギーもささげるから、自分が逆に欲しい時には子どもたちからもらえるような関係を、私も築いていけるようになりたいな、と思った。
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