【ドイツで保育士Ausbildung】3年目後期の実習先での成績が付いて、本当の意味で主力教諭になる準備はできた。実習先で良いお手本を持つことの大切さを説明したい

Ausbildung

今週の実習の最後に、成績についての話し合いがあった。

まだ後期が終わるまで数か月あるのに、すでに成績?と思うかもしれない。3年目後期の実習先の成績は、卒業試験を受けるために提出しなければいけないものの一つなので、ある。

成績の基準になるのは、学校側からの成績書フォーマット。実に6つの分野にカテゴライズされた合計40弱の項目があり、《とても当てはまる・当てはまる・及第点・あまり当てはまらない・当てはまらない・全く当てはまらない》 の6段階に分けて評価していく。

成績の付け方はこれといって決まりはないが、私たちはこうしている。私自身とグループリーダーがそれぞれ事前に評価をし、Anleiterin(窓口担当者)と3人ですり合わせをする。差があった場合は、話し合ってどちらかに決めたり、間を取ったりする。

 

結果は、私自身とグループリーダーがそれぞれ事前に評価した中に大差はなく、トータルで換算して、かなりいい成績となった。

話し合いの最後に、Anleiterinが私に言った。『この一年、特に後半はカピバラの成長が半端じゃなかった。もう主力教諭になる準備はできたね。』

私はグループリーダーに言った。『本当に、本当に君のサポートに感謝してる。ありがとう。』

 

 

1~2年目も成績は良い方だったのに反して、心の準備は全く出来ていなかった。厳密に言うと、自分が主力教諭として担任のクラスを率いているイメージができなかった。(ドイツの学童保育は言わば午後の学校のようなもの。担任として、クラスをまとめあげる力や統率する力が必要だ。)

私に決定的に欠けていたもの、リーダーシップをとる力。ただこれには理由があった。

 

1~2年目に所属していたグループリーダーが、あまり良いお手本ではなかったのだ。彼女は残念ながらリーダーシップのリの字もないようなタイプだった。私はそれに気づいていながらも、気が付けばそのお手本のようになっていた。私のような子育て経験もなければ教育関係での仕事経験もない【教育初心者】は、身近な人から学ぶし、身近な人からしか学べない。

 

このままではだめだと、3年目にグループを変えてもらった。リーダーの彼女は私が心から教育者として尊敬できる人だった。それからは、とにかく彼女からたくさんのことを学んだ。常に目で追い、主力教諭としてのリーダーシップはどんなものなのか、常に学ぶ意識で傍にいた。

彼女は仕事にはかなり厳しい人で、こんなこともあった。私がグループに来た時に彼女は私の状態を目の当たりにして、事務所に抗議したのだ。『今までのグループリーダーはカピバラに何を教えたの?!なぜ事務所はカピバラのことをここまで放置しておいたの?』

そして『今日からカピバラは常に私の傍に置いてほしい。人手が足りなかろうと何だろうと、どこのクラスの助っ人にも行かせない。』と宣言した。こんなことを言えるなんて、すごい人だ。

そうして私がこの1年で出来る限り伸びることができるよう、環境を作ってくれた。私という人間を知ろうとしてくれ、アドバイスをくれ、改めるべきところを見つけた時は、愛のある批判をくれた。

自分を育ててくれようとしている人に感謝の気持ちを噛みしめるのと同時に、残り一年で主力教諭になる焦りは常にあった。私は過去の2年間をドブに捨ててしまったのだ。もちろんどんなことからも学べることはある。とはいえ、教育初心者である私にとってAusbildungの3分の2の時間はとても大きかった。

だから、この3年目はとにかく経験を積むことに集中した。実習の日は1日も休まないどころか、学校の日も授業の後に実習先に行き、彼女とクラスの子どもたちと一緒に過ごした。彼女といれる時間が貴重すぎる。私には彼女から吸収することが、まだ山ほどある。

そうしてやっと最近、やっと自分が主力教諭になるイメージができるまでになった。そして私が成長していく様子を、周りの人たちはちゃんと見ていてくれた。

 

 

もしあのまま元のグループにとどまっていたら、私は本当に、統率力のない主力教諭に育っていたと思う。それを想像すると、とても怖い。怖すぎる。

この経験から学んだのは、実習先で良い手本を持つことが本当に大切だということ。そして自分にとって良いお手本は、必ずしも同じAusbildungをした人やドイツ人とは限らないということ。こればっかりはその人のキャパシティ、そもそも人に教える才能みたいなものや、誰かを育てる気持ちがあるかにもよる。

そして残念ながら、すべての主力教諭が資格に伴った実力を持っているとは限らない。それに教育の現場は慢性的な人出不足もあって、主力教諭は常に仕事に追われているので、子どもで手が一杯。それに加えてAzubiを育てるなんて、やりたくないよ~という人も多い。

だから実習先を探すのも簡単じゃないし、良い手本を持つことはもっと簡単じゃない。これはもはや運としか言えない。

ここで大切なのは、Azubiとして採用してもらえたら、まずグループリーダーである主力教諭を評価すること。この人のもとで学ぶことがあるか、自分はこの人のどこから学べるか、この人のようになりたいか。

もし合格なら、感謝の気持ちを持って、自分が主力教諭だと思い込み、実習すること。イメージすることは大切だ。あとお客さん気分でいては絶対いけない。立場的にはAzubiだけど、同僚には主力教諭になるつもりの心構えでいることを伝える。そして同僚が自分に対して【Azubiがいる】じゃなくて【準主力教諭がいる】くらいに感じてくれるよう、頑張るのだ。

子どもたちの前では主力教諭のように自信を持ってふるまうし、仕事も積極的に見つける・引き受ける。新しいグループ、新い同僚、こちらからすれば遠慮したりしてしまうような状況だ。でも、チームからしたら私たちは立派な同僚であり、チームメイト。どんどん積極的にいこう。

 

もしあまり良くない手本と判断した場合は、グループを変えてもらったほうがいい。早い方がいい。実習先での3年間は、あっという間だ。何もない状態から主力教諭まで、3年間で育たなくてはいけない。その時間とお手本が自身にとってどれだけ貴重で大切か、悪い手本と良い手本両方を持った私が自信を持って言う。『あなたは望んでも望まなくても、一番身近なお手本通りにしかならない』

 

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