友人、ドイツ生活・就活に疲弊し一時帰国することに

私は少し前から彼女の身を案じていた。

仕事がなく、家にしか居場所がなかった彼女は旦那と様々なテーマでもめ、冬の暗いドイツでちょっと鬱気味だったから。

私と一緒で、ドイツで生きる道を探していた彼女を見ていて思ったことは、母国で大学院まで出ていても、ドイツでAusbildungを始めたり、仕事を手に入れるのは一筋縄じゃいかないということ。仕事を見つけるのが大変なのは、日本人だけではない。

それはたぶん、時期的な問題もあるだろう。

今、留学生がドイツに殺到していると聞く。アメリカがコロナで大きな被害を受けていて、アメリカに行きたかった留学生がドイツに来て、席の奪い合いをしているとか。

彼女の専門である生物学(Biologie)は特に人気な分野なので、仕方がないとも思える。

「BiologinのAusbildungに20件以上応募したけど、全部ダメだった…。もう頑張る気力がない。」と彼女から連絡が来たのは、先月のこと。

会うたびに、どんどんドイツが、ドイツでの生活が嫌いになっている彼女の気持ちに気づく。冬は寒くて夜が長いし、ごはんはマズいし、海はないし、ドイツ人は冷たいし、仕事は見つからないし…

彼女は台湾の大学院で生物学を修了した、いわゆるマスター。頭のいい子だ。

ドイツ人の旦那と結婚し、最初は彼女の故郷である台湾で二人で暮らしたものの、旦那が現地になじめずドイツに移住。彼女の異国での戦いが始まった。

 

今年の一月、私たちはそれぞれのAusbildungに応募するため、自分たちの学歴をAnerkennungするのに必要な書類を一緒に準備していた。

私たちはあの時、確かに同じラインに立っていた。

でも、結論から言うと私は2件応募したどちらからもOKをもらい、もうすぐ契約が完了する。

彼女は4か月ほどもがき、応募した20件以上の先から、お祈りメールをもらった。

彼女の書類に不備があったとは思えない。旦那がドイツ人だし、ちゃんとチェックされているはずだ。

思い当たる私と彼女の違いは、一つしかない。BFDをしたか、しなかったか。

一昨年の冬から、私たちはドイツで生きる道を探していた。

そして私は小学校の学童でBFDをとして働くことに決めた。その時、彼女はやろうとしなかった。家の事もしないといけないし、フルタイムはさすがにね…と。私も最初は全然乗り気じゃなかったし、一体どんなことをするのかもわからないので、一緒にやろうよ!と気軽には言えなかった。

少し経って慣れてくると、BFDでの仕事はとても楽しい。これは彼女にもおススメしないと!と、会うたびに色々と話したが、彼女はやっぱり首を縦に振らなかった。

彼女はそのうち近所の小学校に個人で、理科の実験のワークショップを提供できます!と応募し、採用してもらったものの、時給制で準備の材料費も出ない。いつ必要とされるかもわからないので、収入のあてにはまったくならないのだった。

「今月の収入は16€だったよ…。」と彼女がぼやいていたのを聞いたときはびっくりした。

準備とかは給料に含まれず、学校でワークショップを開いている時間分だけの時給しかもらえないのだ。自己負担した材料費を含めたら、もはやマイナスじゃないか!

コロナが来て、学校閉鎖により、ほぼ忘れられた存在となった彼女はこの一年、ほとんど学校に行く機会はなかった。

私の職場でBufdisは、プロジェクトという時間にワークショップや企画を設け、何か自分の得意な事を子どもに教えてあげることができる。ちなみにGymnasiumでのBufdisは、プロジェクトを必須でやらないといけないと聞いた。

私がよく同僚に、「プロジェクトの時間におりがみのクラスやってみたら?」と言われるように、彼女もBufdisとして学童で働けば、そうして理科の実験のワークショップを開くことができるのだ。材料費だって請求できるし、準備も仕事時間内にできるし、開催している時に同僚から助けの手も借りられる。

まぁ、わかる。彼女は子どもと仕事するのは好きだが、教育分野に興味があるのではなく、自分の分野からひねり出して、アルバイトの一環として、子ども相手に理科の授業のワークショップを提供しているだけ。なのでBudfisとしてフルタイムで学童保育で、しかも月収300€で働くのは、割に合わないと思うだろう。

でも、BFDはパートタイムもできる。週20時間で、月収は150€になるが、16€よりマシだろう。

彼女の専門分野の、Biologinの方向でBFDが出来れば良いのだが、BFDの活動分野は社会福祉に限られる。

私は折に触れて彼女にBFDについて話し、一時彼女はBFDをやる気になったものの、始めるまでには至らなかった。

間違いなくコロナは就活やアルバイト探しをより困難にした。

困難だけでなく、やる気も奪われたと言えるだろう。

 

彼女が故郷でKururlaubのように療養して、元気いっぱいになってドイツに戻ってくることを願うしかない。

 

 

 

 

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